2021.11.30
2021年のW11を振り返る | 今年の商戦のポイントは?
大型セールイベントTmall W11は、今年で13回目の開催となりました。TmallプラットフォームにおけるGMV(流通取引総額)は、5,403億元(日本円で約9兆6,000億円)を記録し、第一回目の開催のGMVより4,832億元(日本円で約8兆5,000億円)アップしています。大きな経済効果を与えた一方で、今年のW11にはこれまでとは異なる変化が見られました。本記事では2021年のw11を振り返りながら、新たな変化にも迫っていきます。
目次
例年とは異なる演出
今年のW11は今までよりも、消費を煽るような演出が抑えられていました。例えば、これまでのプラットフォームはリアルタイムで売上実績を大々的に公表していましたが、今年は行われませんでした。また、ブランド達もこれまでの過剰なほどのライブコマースを避けているようでした。
プラットフォームの売上動向
淘宝、京東、拼多多の3つのプラットフォームが公表した販売に関するデータから今年のW11における売上を3つのポイントにまとめました。
⑴ユーザー集客
W11販売開始当日には、淘宝、京東、拼多多の3つのプラットフォームへ計684百万人のユーザーが集まりました。
⑵GMV(流通取引総額)
11月12日24時時点の集計結果によると、TmallのGMVは5,403億元(約9兆6,000億円)に達し、昨年に比べ8.5%増となりました。また、京東はGMVが3,491億元(約6兆円)に達し、2020年に比べて28.6%増となっています。
⑶DAU(1日のアクティブユーザー)
11月1日、淘宝、京東、拼多多の1日のDAU (Daily Active User)は、前年同期比で、それぞれ4.5%、27.4%、23.6%増加しました。
消費を煽るような演出は行われませんでしたが、いずれのプラットフォームも昨年よりも数字を伸ばしており、W11の注目度が伺えます。
ブランドの動向
⑴大手海外ブランド
L’OréalグループとAppleは、TmallのW11で史上初の売上100億元(約1,788億円)突破を果たしました。その他にも36のブランドが10億元(約178億8,000万円)の売上を記録し、485のブランドが1億元以上(約17億8,000万円)を売り上げました。
⑵その他、靴・ファッション・電子機器業界におけるブランド動向
靴・ファッション・電子機器業界においては、大手ブランド以外も躍進した。700以上の新興ブランドが細分カテゴリーで売上1位を記録し、760の中小ブランドも 数100万元から数1,000万元へ売上を伸ばした。
⑶続く国潮ブーム
今年のW11は、売上高が10億元を超えたブランドの大半が中国国産ブランドでした。ブランド例としては小米(Xiaomi)、海尔(Haier)、安踏(Anta)、薇諾娜(Winona)、波司登(Bosideng)などが挙げられます。国潮ブームは今後も広がりを見せそうです。
今年特に注目を浴びたブランドはこちらの記事で特集しています。
食品業界の動向
食品業界では、老舗ブランドが売上ランキングの上位を死守しましたが、新興ブランドも奮闘していました。
⑴食品・飲料業界
食品・飲料業界では、老舗・有名ブランド商品を押さえ、新参ブランドである「王小鹵」、「得列羅」、「CHALI茶里」などが売上トップ10にランクインしました。
⑵菓子業界
菓子業界では、不動の人気を誇る中国三大お菓子ブランドである「三只松鼠」、「百草味」、「良品鋪子」が売上トップ3でした。また、若者から人気のある「来伊份」は2020年の9位から7位に順位が上がり、好調に消費者の人気を掴んでいるようです。
⑶酒類・アルコール飲料業界
酒類・アルコール飲料業界では、「茅台」や「五粮液」などの中国白酒(バイジュー)類ブランドがトップ10の8位までを占めていました。続く9位はフランスのブランデーブランド「Remy Martin」、10位はカクテルブランド「RIO」がランクインしました。
各プラットフォームのマーケティング動向
年に1度の大きなイベントの為に、各プラットフォームも様々な工夫を凝らしました。主なプラットフォームを取り上げご紹介します。
⑴Tmall
アプリに搭載されているミニゲームをリニューアル、W11の宣伝を狙いとした新機能を追加しました。他にも、ショッピングカートのシェアを行えるようにし、他人に買い物の履歴を見せる事で割引のサービスを受けられる販促活動を行っていました。
⑵京東
消費者に対しては1時間以内の配送サービスを実施し、店舗に対しては出展をサポートする為に宣伝用の補助金の提供を行うなど、消費者と店舗両方のユーザーへサービスをおこなっていました。
⑶抖音-Douyin(中国版Tiktok)
抖音は、ユーザーへ向けてショートムービーのコンテストを開催し、ブランドや商品の露出を図ると同時にユーザーの流入数を得ていました。
消費者の動向
今年のW11は、消費者の動向にも以下の様な変化がみられました。
⑴中高齢者
中高齢者である40~60歳の消費意欲が高まりを見せています。現在中高齢者は、オンライン支出の年間成長率が20.9%あり、Z世代に次ぐ消費力の中核を成す存在へと変化しつつあります。主要な消費対象は依然として生活必需品ですが、自分の趣味・ニーズに対する支出も増加傾向にあります。
⑵95後(1995年~2000年の間に生まれた人)
これまでの95後の若年層はW11のセールを待ち望み、開催と共に爆買いを行っていましたが、2021年のW11では、消費意欲はさほど高まらず、セールへの不満をSNSで書き込むユーザーもいました。W11に対する興味関心や参加意欲は変化しつつあるようです。
⑶セールイベントへの不満
W11では、どの店舗も割引を行うことで集客につなげています。消費者達は如何に得をするか、各店舗の割引におけるルールを研究し、買い物を行っています。一方で、そういった割引に惑わされて購入をしてしまうなどの「罠」にかかる事を心配し、疲弊をしていたようです。
ライブコマース動向
中国市場で大きな影響力を持つライブコマースも、今年のW11では少し変化がありました。
⑴ライブコマースへの不満
2021年のW11で行われたライブコマースには消費者から以下の様な意見が寄せられていました。
「割引券獲得の仕掛けがあまりにも複雑すぎて、いちいち謎解きに付き合うのに疲弊した」
「ライブ配信ルームに入るとライバーの言葉に唆され、つい買いすぎてしまった」
「割引の度合にあまり大きなお得感はしなかった」
⑵ライバー達の価格交渉力が弱かった?
これまでのライブコマースにおける特典は、商品を直接割り引くものでしたが、2021年度のW11では、商品にミニサンプルをおまけする様な形が多く行われていたようです。店舗やブランドへの価格交渉力が低下しているのではないかと考えられています。
トップライバー
タオバオのライブコマース販売データによると、トップライバーである「薇娅」と「李佳琦」は、合計189億元を売り上げました。今年度のW11でも、その大きな影響力を見込んで数多くのブランドからの販売依頼が殺到していたようです。この高い売上実績は、発信情報の正確さなどによる信頼性の高さや、熟練したライバーの運営チームが持つ商品採用におけるセンスや需要に対し供給量を確保する能力によるものだと考えられます。
まとめ
2021年のW11では、市場全体が煽るような消費の呼びかけをやめ、ECプラットフォームもブランド達も理性的な行動が目立っていました。また、大手ECプラットフォームは、GMVを追求するのではなく、中小企業の成長に目を向けサポートするようになってきています。販売者側も恒例であった大幅割引の度合いを控え、高品質な商品を販売する方へ重きを置き始めているようです。
様々な変化があった2021年W11でしたが、今回のイベントも大きな経済効果をもたらしました。中国市場においてW11は重要な商戦です。今年の動向を分析し、来年の開催に向けて早い段階から戦略を練っていく事が必要不可欠です。
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